BPOの現場からセンター型社内ヘルプデスクの効果と未来

BPOサービス第二本部 橋本 伸一と松尾 幸治の写真
橋本 伸一橋の写真

BPOサービス第二本部
BPOサービス一部 部長 

橋本 伸一

松尾 幸治の写真

BPOサービス第二本部
BPOサービス一部 第二課 

松尾 幸治

企業がIT機器やシステムを導入し、それらを活用してビジネスプロセスや顧客体験に変化をもたらすことは、イノベーションの創出や生産性を高める重要な要素となっています。
企業内でこうした変革の推進役となる情報システム部門の業務は増加・高度化していますが、IT人材の不足は解消されていません。場合によっては、多忙な情報システム部門が革新のボトルネックになってしまうケースもあるでしょう。
このような状況で、情報システム部員が従来の業務から役割シフトするには、どうしたら良いのでしょうか。
その効果的な実現手法が、センター型社内ヘルプデスクアウトソーシング(自己解決型ヘルプデスク)です。

今回は、社内ヘルプデスク業務のアウトソーシングの最前線で、業務の設計・構築フェーズを担うプロジェクトマネージャー(橋本)と現場リーダー(松尾)が、センター型社内ヘルプデスクの効果と未来について語ります。
「企業内のIT人材不足を感じている」すべての経営者・役員・情報システム部課長のみなさまはもちろん、特に「情報システム部門の体制に課題がある」「ヘルプデスク運用を改善したい」「ヘルプデスクを社外に委託したいが、社外対応やセンター対応は難しいのではないか」といった課題感をお持ちの方はぜひご一読ください。

今回はセンター型ヘルプデスクの最前線で活躍されているお二人に「センター型社内ヘルプデスクの効果と未来」についてお話いただきます。まずは簡単に自己紹介をお願いします。

橋本:現在は、ヘルプデスク案件の業務設計・構築フェーズのプロジェクトマネージャーを担当しています。営業段階のお客様ヒアリングから、設計時にはプロジェクトマネジメントに加えてドキュメント作成にも関与しています。
2001年にキヤノン商材のサポートからヘルプデスクに携わっているので、ヘルプデスクのキャリアは20年以上になりますね。

松尾:私は、元々システム開発からキャリアをスタートしています。はじめの20年はプログラマー兼SE、その後10年は橋本と一緒にヘルプデスクを担当しています。開発者とヘルプデスクの双方の視点・気持ちがわかりますので、そのあたりを業務に活かしつつ、プロジェクトリーダーとして日々の運用管理やエスカレーション対応、内部FAQや手順書の整備などを行っています。

お客様がお持ちの課題について教えてください

松尾:社内ヘルプデスクのアウトソーシングのご相談をいただく際、お客様は、さまざまな課題をお持ちになっていますが、やはり多いのは属人化ですね。
ナレッジが蓄積されておらず人の頭の中にしかない。この件はAさん、あの件はBさんという状態で、担当者がいなくなったら業務がまわらない。ユーザーからの問い合わせにスピーディな回答が出来ないうえに、対応が標準化されていないので品質も安定しない、という状態です。
これは珍しい話ではなく、ご自身の業務を棚卸して、標準化することは、なかなか難しいんですよね。手間もかかりますし、客観性を持って棚卸することは簡単ではありません。

BPOサービス第二本部 BPOサービス一部 第二課 松尾 幸治の写真BPOサービス第二本部 BPOサービス一部 第二課 松尾 幸治

橋本:まったくその通りです。属人化の理由はさまざまですが、昔から使い続けているインフラやシステム、例えばオフコン 等のサポートも属人化しやすいところです。部長や課長など社歴の長い方が兼務でサポートしているケースもあり「その人でなければ対応できない」という認識が社内で出来上がっているので属人化解消の目途は立たず、多忙な役職者の足かせになっています。
※オフコンとはオフィスコンピューターの略。業務に特化したシステムの共有型コンピュータ

このようなケースでも、私たちにお任せいただければ問題解決を進める事ができます。
オフコンのサポートについて、すべて理解しようと思うとサポート開始まで時間がかかりますが、問合頻度の高い80%程度の質問には、私たちが速やかに対応することが可能です。長年役職者の方が手放せなかったサポート業務の8割を削減することで、新たに導入するシステムの検証など本来フォーカスすべき業務にシフトできるため、ヘルプデスクのアウトソーシングに高いご評価をいただいています。

松尾:本来着手すべき「コア業務」に着手できていないというのも、お客様が抱えられている解決すべき課題です。情報システム部門のみなさんが問い合わせ対応に追われて、本来やるべき業務である開発や設計の時間がとれていない。ヘルプデスク業務をアウトソーシングすることで、積年の課題をスピーディに解決できます。

橋本:当社にご相談いただく際、多くのお客様は多忙で、ヘルプデスクの対応スキームは構築されていない状態なので、履歴管理が行われていないケースも多いです。履歴が無いので分析できず、品質もあがらず、回答スピードも遅いためユーザー満足度も上がらないという悪循環に陥っています。

IT人材が不足していることは、こうした状況を生む原因のひとつですが、実は、業務整理・分析・設計を担える人材がいないことも大きな原因です。
履歴を分析できれば、そこから問い合わせそのものを減らすために何が必要なのか発見することができますし、それを起点に、FAQの作成やチャットボットへの誘導など、問い合わせ数そのものを減らすためのアクションに繋げることもできます。
単純にマンパワーでカバーするのではなく、問題の原因から解決していくアプローチが大切です。

そもそも社内ヘルプデスクを情報システム部門の社員の方が担当されている場合は、問い合わせする側・回答する側ともに社員同士なので、双方ともにサポートサービスという意識はそれほど強くないかと思いますが、私たちは社内ヘルプデスクを「サポートサービス」として提供するので、ユーザー対応はもちろん、業務設計・報告・分析・提案といった改善アクションを確実に進めることが可能です。

BPOサービス第二本部 BPOサービス一部 部長 橋本 伸一の写真BPOサービス第二本部 BPOサービス一部 部長 橋本 伸一

センター型社内ヘルプデスクを導入するメリットとは

※オンサイト型(お客様社内に当社スタッフが常駐してサービスを提供)
 センター型(当社センター内で当社スタッフがサービスを提供)

橋本:オンサイト型と比較して、センター型の社内ヘルプデスクアウトソーシングを導入することで、お客様には多くのメリットがあります。

最初にお伝えしたい点は、コストメリットです。
オンサイト対応では、常駐スタッフの人数分の費用が発生しますが、センター型(シェアードタイプ)の対応の場合、作業工数で委託費用を算出するため、相対的にコストを抑えた運営が可能です。
私たちは業務プロセスを定義して作業工数を算出し、作業工数*処理件数で御見積を作成しています。立上げ当初は専任対応で行うこともありますが、その後、作業実績や問い合わせ対応件数の増減などのご状況を考慮しつつお客様との協議をふまえて、専任・シェアードのバランスを調整しています。
業務追加時にも1名増員ではなく工数ベースでの対応が可能ですし、予測される繁閑に合わせた計画的な対応調整も実現可能です。

センター型社内ヘルプデスクのフロアイメージ

さらに、管理工数も削減できます。
オンサイトで、社員の方や派遣スタッフがヘルプデスクの対応を担う場合、労務管理・業務管理が必要になり、お客様に負荷がかかりますが、当社に業務委託いただくことで、管理業務が大幅に手離れします。
業務管理・労務管理は当社の管理者が実施します。業務内容の定期報告を行いますし、新しい業務が追加発生した場合の手順書作成やスタッフへのレクチャー・落とし込み等も当社で実施します。

松尾:BCP対策という点でも有効です。
お客様の本社が被災した場合、間接部門の運営が停止してしまう可能性がありますが、アウトソーシングすることによってこのリスクを分散することができます。お客様の本社所在地と当社の幕張BPOセンター間でも地理的なBCP対策となり得ますが、当社の幕張BPOセンター自体もBCP対策を行っていますので、お客様のご了承があれば、分散拠点での業務体制を採用し「情報システム部門のヘルプデスク対応は一切止まることが無い」という状態を実現することが可能です。

センター型社内ヘルプデスクの業務受託の様子

橋本:当社に蓄積された業務設計ノウハウを活用できる点もメリットと言えますね。
当社では、数多くのお客様企業のヘルプデスクの業務設計・運用・改善を担ってきました。時間をかけて蓄積・改善してきたノウハウを、お客様が自社のために即座に活用できるのはとても生産的ですよね。
お客様自身で運用されている場合は特に、知らず知らずのうちに作業が膨らんで無駄が多くなりがちで、それに伴い業務に多くのリスク要因が内在していることが少なくありません。私たちにヘルプデスクを任せていただければ、こうした運用改善を徹底的に行います。
リスクを排除するのは特に松尾が得意にしているところですね。

松尾:作業の手順を明確にして、リスクを洗い出し、システム化・自動化等でヒューマンエラーをなくすアプローチをしていきます。シンプルですが、これを着実に実行することでリスクの発生を抑えています。

橋本:また、業務設計・運用立上げはフルリモート対応が可能です。東京から離れた遠方のお客様でも効率的にアウトソーシング体制に移行できるので、ぜひご検討いただきたいですね。
ロケーションが異なる事により、コミュニケーションエラーなど不安を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、まったく問題ありません。直近のケースとして、お客様が大阪、当社センターが幕張というロケーションで、フルリモートによる業務設計・構築を行いましたが、認識の齟齬なくスムーズに立上げを完了しています。
コロナ禍を経て、リモートがスタンダードとなった現在では、お客様もロケーションを意識しなくなりつつあるのではないでしょうか。

松尾:先程話題にあがったオフコン関連でもエミュレーターで対応できるので、パソコン上で対応できるものであれば、リモートでもまったく問題ないですね。運用後、新業務が発生した場合でもスムーズな対応が可能です。

安心を生む業務設計ドキュメント

橋本:私たちがヘルプデスク業務を受託する際は、はじめにプロジェクトの進め方やスケジュール等をドキュメント化して丁寧にご説明するので、安心感があるというご評価をいただいています。
業務移行計画書、WBSなどの計画系の資料はもちろん、業務運用に纏わるドキュメントとして、業務を一覧化したプロセスマップ、エスカレーショントリガー等のエスカレーション要件を明記したエスカレーションマップ、アウトソーシング開始を判定いただくポイントを明示したリリース判定表等々、認識の齟齬が無いよう要点を絞りつつドキュメントを整備しています。
運用要件定義書では、ナレッジ管理の仕方、KPI定義、会議体から入館管理など細かい部分まで定義していますが、特に重視しているのは、プロジェクトのミッション・ビジョンの定義です。このヘルプデスクアウトソーシングによって、お客様のどのような課題を解決するのか。これを念頭に置いて、メンバーが業務にあたるよう要件定義書に明記しています。
ドキュメントは、HDI の国際認定資格者の知見を活かしてブラッシュアップしています。

※HDIとはヘルプデスク協会の頭文字です。HDIは、1989年にアメリカで設立され、ITサポートサービスにおける世界最大のメンバーシップ団体です。世界で初めて『国際認定資格制度』を築きあげました。当社にはセンターの国際認定を行う「国際認定オーディター」、センター管理者の国際認定である「SCM(サポートセンターマネージャー)」などの資格保有者が在籍しています。

ヘルプデスク受託前に進め方やスケジュールをドキュメント化してご説明

改善の起点となるコールリーズン分析

橋本:定期的にコールリーズン分析を行い、都度お客様と協議の上、対策を講じています。
コールリーズンとは、ユーザーが問い合わせに至った理由(直接原因)です。 私たちは一般的なセンターで記録・集計・分析されている対応履歴に加え、コールリーズンの分析・活用を行っています。
コールリーズンの分析結果をお客様と協議することにより、ユーザーがつまずきやすい社内オペレーションの業務プロセスの改善やシステムの改修など、さまざまな改善に繋がっています。

簡単な例としては、パスワードの問い合わせが多ければ、パスワードリマインダーを新設したり、再設定プロセスの改善をご提案します。

また、小売業のクライアント様のケースでの一例を挙げると、新店舗の立ち上げ時に、現場が社内ポータルを利用できないという状況がありました。
社内ポータル利用には事前申請が必要なのですが、依頼ルートが存在しておらず、店舗立上げの度に現場が困っていたのです。
コールリーズンの分析を起点に、事前申請ルートの不備の発見とプロセス改善の提案に繋がりました。整理すると当たり前のように聞こえるかも知れませんが、実際は各ステークホルダー間の盲点になっていました。

このように、ボリュームが大きくなくても、クリティカルなものはピックアップして、多くの改善に繋げています。

社内ヘルプデスクの効果と未来

橋本:これから先の社内ヘルプデスクは、利用者の自己解決型 にシフトしていくと考えています。
ヘルプデスクに問い合わせるユーザーの目的は問題解決であり、電話をかけることに必然性はありません。
電話して問題の要点を説明して、ヘルプデスクからの回答内容を理解し、アクションするというプロセスを辿るよりも、自分で調べて問題を解決する方が解決までのプロセスは短くなります。
では、なぜ今までそうならなかったのか。
それは調べても効率的な解決に繋がらなかったためです。

自身で調べることで効率的に問題解決できる。そのためのインフラが用意されていれば、コール自体を大きく削減しつつ、問題解決のスピードアップも実現するという未来に近づくことができます。

ユーザーが「自分で調べて解決できた」という成功体験を積むことができれば、自己解決に向けた行動は加速していくでしょう。
私たちは、その成功体験を創り出すために、日々の問い合わせ対応で蓄積した対応履歴やコールリーズンを分析し、FAQやチャットボット等を整備して、それらのナレッジチャネルへ効果的なインプットと導線を引く必要があります。

私たちのお客様では、既にこのような変化の兆しが見え始めています。
例えば、チャットボットの管理担当者をアサインしていただく動きが出ていますね。
当社はコールリーズン分析を実施した後、チャットボットにインプットするQ&Aを作成して、毎月お渡しする運用を続けています。
チャットボットへのアクセスは増加し、利用率は上昇傾向で「困ったらすぐに電話する」という文化が変わりつつあることを実感しています。

こうしたチャットボットを含めたAIツールをユーザーに継続利用してもらうためには、高い解決率がポイントです。
私たちは、ヘルプデスクアウトソーシングを担うことで、毎日サポートの最前線でユーザーである従業員のみなさまのお問い合わせを直接伺って回答しているため、AIに渡すデータとして適した質問と回答をテキストベースで準備することが可能です。

自己解決型のヘルプデスクを強化することは、ユーザーにも、企業にもメリットがあります。
ユーザーにとっては、時間を問わず、いつでも回答が得られるという利点がありますし、企業目線では、人的コストをかけずに24時間365日のセルフサポート体制を構築できます。

今回お話してきた通り、私たちは、まずアウトソーシングにより情報システム部門のヘルプデスク業務を受託し、ユーザーの満足度を高めながら、情報システム部員のみなさまがコア業務にシフトできる環境を創ります。その後は、ナレッジの整備やコールリーズン分析を通じて、自己解決型ヘルプデスクへのシフトをサポートしていく、情報システム部門の改革パートナーでありたいと考えています。

また、自己解決型ヘルプデスクによって多くのユーザーの問題解決の方法は変わっていくでしょう。これに伴い私たちはユーザー目線でプロセスを整備したり、問い合わせそのものをさらに削減するための改善活動に今以上に力を注いでいくべきだと考えています。
一方で、すべてのお客様が自己解決する訳ではありません。数を抑えながらも、電話でのお問い合わせは発生すると思いますし、自己解決できなかったユーザーからの問い合わせ内容は難易度も上がると考えています。ユーザーに一番近い存在として、こうした問題解決を支えるセンターの価値は今後も変わらないところかと思います。

社内ヘルプデスクの効果と未来を語る様子

これからお会いするお客様へ

松尾:現状では、社内ヘルプデスクを社員や派遣スタッフで対応されているケースが多いかと思いますが、自分自身ではなかなか課題が見えてこないものです。
私たちにご依頼いただければ、多くのお客様のヘルプデスクアウトソーシングで得た知見をふまえつつ、第三者視点から、課題抽出や改善施策をご提案いたします。

橋本:自社の特殊性などは気にせずに、まずはお困りごとをご相談ください。
貴社の課題解決に向けてどのようなアプローチが効果的なのか一緒に検討させていただきたいと思います。
また、業務設計や運用の内容、業務移行の進め方について、ご理解・ご納得いただくまで、わかりやすく丁寧にご説明差し上げますので、その点もご安心いただき、お気軽にご連絡ください。
お会いできるのを楽しみにしています。

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